入れ歯を安定させるためには大きく作るというのが歯科医の常識です。
そうは言っても大きすぎる入れ歯はきゅうくつであり、舌の動きや
口全体の動きのじゃまになってしまいます。
解剖学的に入れ歯の外形は説明できますが、それぞれの歯科医が
作った入れ歯の形は違ってきます。3箇所の歯科医院で総入れ歯を作った
としてそれぞれの形が全然違うのは患者さん自身が経験済みでしょう。
しかし、2人の入れ歯の達人が総入れ歯を作った時は大体は似てくるのでは
ないかと思います。
また、トレーにシリコン剤を大目に盛ったため、ほっぺたが広がって大きく
できた模型を技工士が見た場合その外形線はどこにもってくるのかまったく
わかりません。
小さくならないようにしっかり作った入れ歯で患者さんに使用してもらい、
この部分はもっと小さくできるかなと思って小さく削った後、
次回来院時に患者さんが、「前より楽になりました」と言ったなら削る前の
入れ歯は大きかったのでしょう。
こういった事を何十年も毎日やっていると患者さんの反応からいろいろな事
を学ぶ事ができます。
私が大学を卒業したてのころ、入れ歯がうまくなりたくて、当時手に入る専門書
はほとんど読みましたが自分の知りたいことはどこにも書いてありませんでした。
そこで思ったのは、「だれかに教えてもらおうと思わないで、ひたすら入れ歯を
作りつづければいろいろなことがわかってくるだろう。」ということです。
入れ歯の大きさにもどりますが、私の考えは
「大きすぎる入れ歯は患者さんがかわいそう。
小さいと安定しないで動いたり外れたりするので吸着を重視しながら
口の動きの邪魔にならないように小さく作る。」
ということです。